夜分遅くにすみませんねぇ
こんな話は如何でしょう?
とある御山を満月が追い抜いた頃
御山と大きな川の間にある
小山の社に
1人の男が賽銭を盗みにやってきました
ゲラゲラと笑いながら
御山の横を流れる大きな川がグニャリと蠢くと
さらさらと流れる冷たい水が白い鱗に変わり
御山に並ぶ程の大蛇となりました
月夜目にわざわざ来るとは賎しいモノよ
人なぞ天照が居ようと隙あらば罪を犯すモノさ
月明かりにてらてら光る
甲冑の様な甲殻と数十の鉤爪を持つ大百足が
御山に巻きつきながら男を同じように見下していました
地の金川の金を盗んで穢す罪人よ
挙げ句罪人同士殺し合う恥知らず
地を手にしてるとおもいあがり
川を手に入れたとおもいあがる
感謝を忘れて
仇なす災い
僅かに揺れれば事は済む
僅かに吹けば押し流せる
脆弱なモノ
揺すってやろうか?
吹いてやろうか?
あの雛の巣立ちが済むまで待つか
この桔梗が落ちるまで待とうか
男はお目当てのモノを手に入れ
浮かれた調子で丘で社をあとにしました
雛はまた産まれる
桔梗はまた咲く
人が邪魔さえしなければ
下流の集落が丸ごと岩水に呑まれたのは
新月の晩でした
というお話